国際基準の安全な野菜とは?グローバルギャップ認証から考える本当の安全
オーガニックの有機JAS認証は有名ですが、食の国際基準のグローバルGAP認証はご存知ですか?厳しい審査をクリアするにはどうしたらいいか、実際の取り組みを聞いてみました。
グローバルギャップとは?有機JAS認証との違い
グローバルギャップは、正式にはGLOBALG.A.P.(GLOBAL Good Agricultural Practice)と表記され、食品安全、労働環境、環境保全に配慮した「持続可能な生産活動」を実践する企業に与えられる、世界120カ国以上で採用される国際基準の認証制度です。
オーガニックの認証である有機JASと大きく違う点は、基準として労働環境が入っているところになります。
◆有機JAS
農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないことを基本として自然界の力で生産された食品であることを申請して第三者が承認する。
・日本での認証数:約4,000戸(平成22年時点)
・費用:数万円程度
◆グローバルギャップ
218項目の食品安全、労働環境、環境保全に配慮した持続可能な生産活動を実践していることを第三者が証明し、承認する。
・日本での認証数:約740経営体(2020年)
・費用:年50万円程度
上記のとおり、グローバルギャップはハードルが高く、認証が少ないため認知度も低いというのが現状です。
全218項目!グローバルギャップ取得までの苦労
グローバルギャップでは野菜・果樹認証における管理点が全部で218項目あります。食品安全99項目、トレーサビリティ22項目、作業従事者の労働安全と健康28項目、環境(生物多様性を含む)69項目です。
とても細かく定められているので、「大変だな~」「できればやりたくないな~」「今すぐ輸出するならいいけど」と消極的になり、やる価値があるのかは半信半疑になりました。
しかし農場を大きくし、働く人数が増えてきて、野菜を生産する法人としての運営を考えたとき、グローバルギャップという指針がとても役立つのでは考えたのです。
※楽天ファームの自社農場は、2018年3月~2022年3月11日までグローバルGAP認証を取得しておりました。以降は更新しておりません。
まずはすべてを記録にとります。以前は農作業後に事務所でパソコンを使ってしましたが、スマホで現場からできるように改善しました。作付け、農薬、肥料、トラクターの使用をはじめ、事務所の整理整頓、袋詰め、保管の仕方も決められています。経理の購入記録も必要になります。
また畑を整理整頓して、肥料の置き方や保管場所を工夫しました。以前は人それぞれで基準が違うことが原因で、雨に打たれてダメにしてしまったり、地面に放置して成分が流出しまったりということが発生していました。ですからみんなで共通認識を持つことが大切になってきます。
資材置き場には、張り紙をして区分けをしていきました。そうすることで「あれ、どこ置いた?」なんて言って探し回るという時間ロスもなくなりました。
頻繁に使用する資材は、新品、再利用、廃棄とその劣化具合で分けることで、作業中に「これはもう使えない」というストレスがなくなり、作業効率も格段にあがりました。
はじめは大変だと思いましたが、記録することが将来のよりよい生産の意識につながり、肥料や水、周辺環境など、植物の生育に関わるものすべてに気を払うようになって、目の前の作業だけではなく、広い視野で物事を見られるようになってきたと思います。
安全な労働環境が安全な野菜を作る
この危険個所のマップは、よく脱輪をしたり、ぶつけてしまったりする場所をまとめたものです。事前に注意をすることを意識して、トラクターなどの取り扱い方も教育することにより、以前より事故やケガが少なくなっています。
食品安全を意識することで、周辺の環境への影響まで意識するようになりました。
これは草刈り機を安全に使えるように貼ったシールです。こういった機械は便利ですが、一歩間違えば大きなケガにつながってしまうので、安全に使えるようみんなで工夫しています。
もしも現場で事故が起こってしまっても、最適な行動がとれるように、大切なことは見える場所に貼りだしています。また食中毒や残留農薬がないようにするために、手洗いや道具の洗浄、水の取り扱いにも気を付けるようになりました。
これからのグローバルギャップ
これまで農家さんといえば家族経営が中心で、農協と個人の信頼で取引を行うということが多かったので、第三者が評価する仕組みがそれほど必要でなかったのではと思います。
これからは法人による農業の集団化が進み、農協を介さない取引が増えて、海外との取引も広がってくると考えると、グローバルギャップのような国際基準がより重要になってきます。もしそれぞれの国で基準がバラバラだと、新規に取引するにはリスクが大きすぎますよね。
国内においても、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組む大手スーパーなどから、グローバルギャップを調達基準にする流れは増々進んでいくかもしれません。
サステナブルな環境や労働者の安全を大切に、本当の意味での安全安心な野菜をお届けすることの価値が、これからさらに上がっていくことでしょう。
- この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
- 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
- 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。