沖縄北部マンゴー好きが研究する渾身のマンゴー!世界自然遺産やんばるの恵みが生む濃い味の秘密
沖縄県名護市と東村で農園を経営する沖縄ゴールデンマンゴーファームの八谷耕平(はちやこうへい)さん。農業の知識が豊富な彼が、マンゴーを愛し、マンゴーを研究して栽培するマンゴー!美味しさの秘密を伺いました。
マンゴー好きがマンゴー農家に!仙台から沖縄へのご縁
――農家になった経緯は?
大学卒業後、冷凍食品メーカー、塗料メーカーを経て、2012年からコルテバ・アグリサイエンスで働いています。有機農法で使用できる天然物由来の有機JAS規格に適用した資材を多く作っている農薬メーカーです。
マンゴー農園の経営は2021年から始めました。妻が沖縄出身で、もともと義父が先にマンゴー農家をやっていたんです。
そんなご縁もあって、コロナ禍で環境客が減り、台風で出荷ができず、価格が暴落していくマンゴーを目の当たりにし、さらに高齢化で廃業耕作放棄地が増えていく現状に危機感を覚え、もったいない!沖縄の北部をもっと盛り上げたい!と思い、起業しました。
ですから今は2足のわらじを履き、沖縄でマンゴー栽培をして、九州でコルテバの営業マンをして、マンゴー農園の1つは義父に任せ、自分は行ったり来たりしています。
――ご出身は?
出身は宮崎県仙台市です。大学で静岡に行き、沖縄出身の妻と出会い、仕事の都合でだんだんと南下してきました。
今は4人の子どもに恵まれて、にぎやかに過ごしています。
地元仙台にいる両親は、2~3カ月に1回は沖縄に来て、孫の世話をしてくれます。下の双子はまだ1歳になったばっかりなので、有難いですね。
奥さんはすごくアグレッシブで、子育てをしながら、農業大学校に通い、マンゴー栽培を学んでいるんですよ。頼りになります。
――みんなマンゴー好きなんですね?
マンゴー大好きです。私はマンゴーがフルーツの中で一番好きですね。はじめて生で食べたときは、「美味しい!!!」と声に出してしまうほど、びっくりしました。完熟して落果したマンゴーを、手で剥いて食べるのは最高です。
――マンゴー好きが作るマンゴーっていいですね!
はい、研究も好きなので、今はハート型マンゴーなどにも挑戦しています。マンゴー栽培はまだ確立して20年ほどなので、まだまだ改善できるところがいっぱいある未開の作物ですよ。
4種のマンゴーを栽培!マンゴー好きはどれを選ぶ?
――どんなマンゴーを育てているのですか?
マンゴーは4種類、アーウィン(アップル)、キーツ、キンコー、玉文(ぎょくぶん)を育てています。
写真はまだ小さいものもありますが、色や形の特長がわかりやすいように並べてみました。キーツはこの倍以上に大きくなりますね。では1つ1つ説明します。
アーウィン(アップル)マンゴーは、赤みがあるのが特徴で、国内産で一番多い品種です。宮崎で有名な太陽のタマゴもこの品種になります。
アーウィンマンゴーは、他のマンゴーに比べて甘みがさっぱりめで食べやすく、日本人好みの味なのかなと思います。病気に弱く、作るのが大変なのですが、みんなが美味しいと言ってくれます。
完熟で収穫するので、追熟は必要ありません。届いたら早めに食べることをオススメします。
キーツマンゴーはサイズが大きくて、赤ちゃんの頭と同じくらいあります。この写真はうちの双子が生後6カ月のときに撮ったものです。形までそっくりですよね。
特徴は緑色で、追熟をさせる品種です。バナナのように追熟に黄色なることはなく、ほぼ緑色のままなので、食べ頃がわかりづらいのですが、冷蔵して1週間くらいは楽しめます。
甘みが強く、味が濃くて、繊維質が少ないので、スプーンでくりぬいて食べるものオススメです。味がいいのでマンゴー好きはキーツを買いますね。
キンコーマンゴーは台湾だとメインの品種になります。すごく味が濃くて、クリーミー!自分はキンコーが完熟になった時の味が一番好きです。ただ足がはやく食べ頃が2~3日しかないので、内地の方はなかなか食べられないかもしれません。キンコーは病気に強くて、ほとんど無農薬で大丈夫なので、作りやすいのもいいですね。
玉文(ぎょくぶん)マンゴーは、大玉で1㎏くらいになるような品種です。糖度が高くて20~25度にもなるので、マンゴー界でも最高峰の甘さだと思います。水を飲みながら食べないと、口の中がずっと甘い感じになりますね。
やんばるの天然水と海のミネラルが美味しさの秘訣
――どんな栽培をされているのですか?
世界自然遺産に登録された沖縄北部やんばるで、ミネラルウォーターでも有名な東村(ひがしそん)の湧き水とミネラルいっぱいの豊かな土壌を活かし、丹精込めて栽培しています。
――ミネラルウォーターで有名?
はい、沖縄でいちばん美味しい水と言えば東村の水で、ポッカの工場もあって「やんばるの天然水 東村の軟水」として出ています。沖縄には硬水の地域も多いですが、東村はやわらかい軟水なんですよ。
そんな美味しい湧き水が園地の隣の小川に湧いているので、それを汲み上げて、畑に散水しています。
――贅沢ですね!ミネラルいっぱいとは?
海に近いので、ミネラルを含んだ程よい潮風が入ってきます。窒素・リン酸・カリ以外のミネラルが土壌に運ばれ、マンゴーの根っこから吸収されるイメージです。
但し、台風で大量の潮を作物が被ってしまった場合は、水をかけて洗い流すようにしています。
――もともとの土壌は赤土?
酸性の強い赤土です。酸性からアルカリ性に土壌改良して、pHを弱酸性になるように調整しています。酸性の土壌は隙間ができるので、根が張りやすく、反対に養分が吸収されにくいので、肥料をしっかりあげることも大切です。
――肥料はどんなものを?
有機肥料は、完熟たい肥、鶏糞、豚糞などを発酵したものを使います。化学肥料はマンゴー専用ではなく、果樹栽培用のものを、成分のバランスをみて選んでいますね。
――農薬はどうですか?
現職の経験を活かして、慣行栽培の農薬を3分の1まで減らした減農薬栽培をしています。実がなってからは害虫をみたら手で一匹一匹とりのぞくとか、手間暇はかかりますが、子ども達にも安心して食べてほしい気持ちの方が大きいです。
――人にも地球にもやさしいですね
できるだけ環境に配慮して、マンゴーを吊るす紐は自然に返る麻紐を使っています。腰につけているのが麻紐です。
出荷時のフルーツキャップはまだナイロンですが、今後はリサイクルなどSDGsに貢献できる地球にやさしい緩衝材にできたらいいなと思っています。
農家としての一日と台風対策
――1日のスケジュールを教えてください
4時半:起床 朝ごはん 子どもの世話(小4小1の支度、双子ミルク1時間)
7時:家を出る
8時:農園スタッフと打ち合わせ~農作業&デスクワーク
17時:農園を閉めて帰る
――朝早くから大変ですね。季節で変わりますか?
4月~10月はだいだいそんな感じで、収穫時期に作業が追い付かなくて、帰れなくなる時はありました。
11月~3月は、作業内容が変わり、剪定や防風林の刈り込み、情報の更新作業などして、休みの日も多めにとるようにしています。
――スタッフさんはどのくらい?
農園は2つあって、東村は従業員1名、バイト2名、名護のほうは義父がやってくれています。
今は台風対策で大変です。(取材時に台風予報がありました)
――台風対策は?
マンゴーハウスは、ビニールをかけたままだと風でつぶされてしまうので、ビニールは剝がします。
今は、実がゆれないように、ネットをかけたり、袋掛けをしたりして対策をしています。水にぬれたり、木が揺れて傷ができたりすると、病気になりやすくなってしまうので、マンゴーを守るために大事な作業です。
2025年やんばるテーマパーク開業に向けて
――5年後、10年後、どうなりたい?
今までの市場にないものを作り、日本中の人を驚かせたいと思います。日本の農業の縮小は間違いなく避けれない問題ですが、少量でも魅力のある農作物を提供できればいいと思います。農家自身が農家という職業に誇りを持てる世の中になればいいですね。
そして、沖縄北部をもっと盛り上げたいと思います。
自分の研究していることは、包み隠さずお教えするので、来たい方がいたらウエルカムです!もともとワーホリやおてつたびで、若い人たちが農作業にきてくれたりしています。
釣りが好きなので、そういったメンバーを連れて、干潮の時にリーフの先まで歩いて行って釣りをし、釣ってきた魚でBBQしたりもします。新しい人に入ってもらえると、新しい考え方も生まれたりして盛りあがるのでいいですね。
沖縄北部では、2025年に新たなテーマパークがオープンする予定です。
名護の園地は近いので、新しいマンゴー、おもしろいマンゴーをコンテンツ化できるように計画をしてます。
これからも大好きなマンゴーを美味しく楽しくお届けできるよう、スタッフや家族、地域の皆様と力を合わせて励んでまいります。ぜひ一度、ご賞味くださいませ。
- この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
- 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
- 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。