自然栽培イセヒカリから作る『玄米仕込みライスミール』!再出発の地山口県で二人の夢が走り出す

自然栽培イセヒカリから作る『玄米仕込みライスミール』!再出発の地山口県で二人の夢が走り出す
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最終更新日:2023.09.28 公開日:2023.06.20

自然栽培米から『玄米仕込みライスミール』を作る維里(いさと)の首藤元嘉(すとうもとよし)さん、陽子(ようこ)さんご夫妻。愛媛から新天地の山口へ移住。更なる夢に向かう熱い物語を生きるお二人を取材しました。

目次

米農家の12代目に生まれて

米農家の12代目に生まれて

――農業を始めるまでの経緯を教えてください。
元嘉さん:
僕はもともと愛媛県の米農家の12代目として生まれ育ちました。
最初は、「農家の長男に生まれたら農家を継ぐ」という周囲の勝手な考えに対して反発しかなかったです。田舎の農業は汚いし夢もないというイメージがあったことも反発した理由でした。
「農業を継ぐことは当たり前」と「農業を継いで何になるんだ」という2つの価値観の間でずっと苦しみながら育ってきたんです。結局、高校卒業後は農業を継がず、近畿地方で会社員になりました。

 ――嫌だった「農業」の道へ…何かきっかけがあったのですか?
27、28歳頃に一度愛媛に帰ってきました。
その時、福岡正信氏の『わら一本の革命』という本に出会ったんです。「耕さない、肥料を与えない、草を除かない」という自然農法と呼ばれる農業を知り、こんな農業の方法があるのならやってみたいと思いました。
しかし、父に伝えたところ「そんなことできるわけあるか!」と一蹴されてしまったんです。
慣行農業をしてきた父とは折り合いがつかず、そこからまた約8年、会社員として勤めました。

幼い頃から「農家を継がなければならない」と言われてきたことも頭に残っており、何をしていても地に足がつかないような気持ちでいたのですが、ある時父が倒れました。

父が倒れた原因は農薬による薬害でした。農業が続けられない状態になってしまい、それならば跡を継ごうと2012年、35歳のときに農業を始めました。

素人が挑む「農薬も肥料も使わない米作り」

素人が挑む「農薬も肥料も使わない米作り」

――こだわりを教えてください。
元嘉さん:
自然栽培(農薬及び化学肥料を使用しない栽培方法)で作ることです。
父が農薬原因で倒れてしまっているので、慣行農業(農薬や化学肥料を使用する一般的に行われる栽培方法)を続けるという発想はありませんでした。
また、幼少期から周囲の慣行農業をしている農家の儲からない状況を見てきていたこともあり、最初から農薬を使わない方法でやると決めたんです。

 父は「農薬を使わない」という僕の方針を認めてくれず、何度もぶつかりました。顔を合わせたら喧嘩というのを繰り返しましたね。

「自然栽培」を勉強

――どのように「自然栽培」を勉強したのですか?
僕が農業を始めたのは2012年頃ですが、当時は自然栽培のノウハウがありませんでした。
インターネットも発達していなかったし、ECサービスもSNSもまだ馴染みがなく、情報もない。そんな時代で「自然栽培」は特に情報がありませんでした。なんとか実践している人を数人見つけて、自分でもやってみるということを繰り返しました。ノウハウがない、情報すら少ない、師匠もいない、農業に関する技術も知識も素人レベルの状態で始めて…完全に独学ですね。

やはり最初はうまくいきませんでした。失敗するというより収穫量が少なかった。
2年目からは自分の中で感覚がつかめてきて、3年目からは収穫したものがお金になるようになったんです。収穫ができて、それを販売することができて、お金になるということを経験して、やっと農家になってきたように感じました。

最近は、肥料など有機農業の勉強も始めています。農薬についても知らないまま否定するのも良くないと思い、少しずつ勉強しているんです。
なぜ植物が育つのかという原理の部分がわからないまま自然栽培に取り組んでいても、再現性がない気がします。再現性がなければ人に教えることができない。まだまだ道半ばなので日々勉強ですね。

ISATOの看板商品「玄米仕込みライスミール」

ISATOの看板商品「玄米仕込みライスミール」

――栽培している作物を教えてください
元嘉さん:
現在はお米をメインに生産しています。楽天ファームで販売するのが自社で生産したお米を使用したISATOの看板商品『玄米仕込みライスミール』です。

 ――『玄米仕込みライスミール』ってなんですか?
自然栽培の玄米から作ったシリアルです。
玄米をアルファー化し、それを乾燥粉砕し成形しています。玄米をアルファー化することで玄米そのものの甘みをひきだし、「玄米だけど消化が良い」というところが特徴です。原料になる玄米はイセヒカリという品種のお米です。

イセヒカリは伊勢神宮で発見された新種のお米

――イセヒカリとはどんなお米ですか?
イセヒカリは伊勢神宮で発見された新種のお米です。
1989年に台風が直撃した際、唯一生き残った2穂の稲が始まりのお米で、現在では伊勢神宮にて「神様に捧げるお米(御新米)」として奉納されているんですよ。私たちはこの神秘的な物語に惚れ込み、農業を始めた当初から大切に育てています。

イセヒカリは口に入れてすぐはあっさりとした味わいですが、噛むほどに旨味が広がります。しっとりした絹のような食感の優しい甘さを持つ上品なお米です。
このイセヒカリの玄米を原料にすることで、玄米仕込みライスミールもホッとする優しい味わいになるんですよ。

玄米仕込みライスミール

――おすすめの食べ方を教えてください!
陽子さん:
まずはそのまま召し上がってください。玄米仕込みライスミールのさくさくとした食感と玄米そのものの甘みを感じることができます。もちろん一般的なシリアルのように、牛乳や豆乳をかけて食べたり、お料理の素材としてご愛食いただけます。

ご愛用様のなかで一番人気なのは、ヨーグルトへのトッピングです。フルーツやはちみつなど甘味をプラスして食べるのがおすすめです。

玄米仕込みライスミール

そのままでも美味しいのですが、私はまずフライパンで乾煎りして更にサクッとさせるのが好きです。その後密閉できる瓶などに入れて保管しておけば、クルトンのようにサラダのトッピングにしたり、ヨーグルトにかけたりといつでも使えて便利ですよ。

玄米仕込みライスミール 離乳食や介護食にもぴったり

また、離乳食や介護食にもぴったりです。
玄米仕込みライスミールの原料は、農薬や化学肥料を使わずに育てた自然栽培イセヒカリなので、赤ちゃんにも安心して召し上がっていただけます。

お湯やスープに浸して柔らかくすれば、美味しい離乳食が簡単にできあがるので、外出時や旅行の際にもとても便利なんですよ。

※アルファ―化により、玄米でも消化吸収しやすくなっておりますが、離乳食を作られる際は水分を多めに加えてください。

美味しかったが聴きたくて…夫婦で支えあう『維里』

美味しかったが聴きたくて…夫婦で支えあう『維里』

――陽子さんも農家出身なのですか?
陽子さん:
いいえ、私はもともと美容関係の仕事をしていました。美容から食という分野に関心を持ち、食への関心の先に食材があり、そして農業にたどり着いたんです。

農業関係のセミナーに参加した際に主人と出会いました。
オーガニックというものに興味がある中で、当時は自分の手で農業がしたいと思っていたんです。しかし、熱い思いで自然栽培に取り組む主人の姿を見て、自分がゼロから農業をするよりも、自分がしたい農業のスペシャリストをサポートするほうが自分の夢を叶えられるのではないかと思うようになりました。
主人の仕事を手伝うようになり、最初は「教えてください!」と金魚のフンのようにいつも主人のあとをついて歩いていましたね(笑)。「株式会社維里」の設立にも関わり、今に至ります。

――「維里(いさと)」…素敵な名前ですよね!
元嘉さん:
「維」は繊維即ち“衣服”、「里」は田と土からできている漢字のつくりから、“食べものを作るところ”と“住むところ”を意味します。「衣食住」という暮らしの言葉が揃っていることからこの名前にしました。
実は運勢が良い画数を調べて、その画数に合う漢字の組み合わせ候補の中の一つでした。
総画数21画なのですが、「地域のリーダーになる」という意味があるそうです。

株式会社維里

陽子さん:
私が一緒に仕事をするようになるまでは、主人が生産から販売まで全て行っていました。そのため、その頃の主人は忙しすぎて鬱になりそうな状態だったんですよ。今は主人が生産に集中できるように、お客様対応、営業、取引先とのやりとりなど、生産以外の仕事は全て私が担当しています。分業することで仕事の精度が上がると思いますね。

元嘉さん:
玄米仕込みライスミールは妻が販売を手がけるようになってから販売数がしっかり伸びています。生産効率が良くなったし、自分のやりたいことに集中できるようになりました。

株式会社維里

――農業をしていて嬉しかったことはありますか?
元嘉さん:
目の前のお客様が「美味しい」と言ってくれることに尽きます!農業をしていて一番良かったと思う瞬間です。
就農して間もない頃、愛媛県には自然栽培や有機農業で作った農産物を売る場所があまりありませんでした。そのため、毎週土曜日に片道2時間かけて高知で催されていたオーガニックマーケットに通っていたんです。ある日、自分が店に立っていると、一度買いに来たお客様が「美味しかったから!」とまた買いに来てくれたことがありました。

「美味しかった」と言われると自分が頑張ったことが認められた気持ちになりますし、人を喜ばせることができていると思うと嬉しくなります。このために一生懸命作っているんだなといつも思える大切な瞬間です。

再出発の地、山口県へ

株式会社維里

――農業をしていてつらかったことはありますか?
生産面積の拡大ができなかったこと、つまり規模を大きくできなかったことです。
愛媛県では自然栽培や有機農業に対する周囲からの理解が得にくいために、今まで土地を借りることができない現状にありました。

生産面積が少ないということは、生産「量」が少なくなります。生産量が少ないので商品が早くに売り切れてしまいます。お客様から要望があっても次の新米の収穫まで待っていただくという状況が何年も続き、それを改善することができずにいました。

そんな中ご縁があり、愛媛県から山口県長門市への移住を決めました。そこでは米作り1本に注力できるようになりました。

株式会社維里

――「農家が移住」ってできるんですね?
元嘉さん:
僕も農業は土地に縛られた仕事だと思っていました。
しかし、「土地を借りて、その土地で農産物を作って、その農産物を売る」という“ビジネスをしている”と考えるようになったんです。農業をして、作った農産物をお客様に届けるということと、土地を管理するということは全く別問題だと気づけたとき、農家でも移住してもいいんだと思うようになりました。

――移住に抵抗はなかったのですか?
元嘉さん:
なかったですね。
「農家でも移住してもいい」という価値観になったとき、抵抗は全くなくなりました。
僕は、肥料の使用量過多により地元愛媛県西条市の水が汚染されているという問題(以下、「西条市の水問題」)を知り、この問題の解決策として肥料を使わない自然栽培に取り組んできました。

そんな中、ある中小企業向けのセミナーに参加したとき、会社の理念、ヴィジョン、ミッションは何かという部分を考え直す機会がありました。
僕のミッションはオーガニックな栽培方法で「西条市の水問題を解決すること」と考えていたのですが、そのセミナーで「ミッションはお客様からの要望にどう応えるかですよ」と指摘されたんです。

自分発信のものはミッション=使命ではなく、ヴィジョン=夢であり、「西条市の水問題を解決するために自然栽培に取り組むこと」は僕のミッションになりえないという決定的なミスマッチに気づきました。「愛媛県じゃなくてもいいんだ」という新しい発見だったんです。

陽子さん:
私も移住に抵抗は全くなかったです。主人と同じ感情の流れで行き着いた考えが移住でした。
主人が苦労してきているのをずっと見ているし、何より大きな機械に乗って広い土地で農業をしたいという主人の夢をずっと聞いてきたので叶えてあげたいという気持ちが大きかったです。

株式会社維里

――「農家でも移住してもいい」「地元でなくてもいい」価値観が変わる出来事が続いたのですね
元嘉さん:
一昨年、島根県で米農家をしている友人のもとに家族で遊びに行きました。
山の奥まで綺麗に広がっている田園風景を見たとき、僕がしたいのは改めて農業だと強く感じたんです。農業がしたいというシンプルな想いを強く感じるきっかけでした。

タイミングよく、楽天農業(株)の遠藤忍社長に「山口県長門市で農業をしないか」と声をかけていただきました。

「農家でも移住してもいい」、「地元でなくてもいい」、「中国地方で見た景色」、そして遠藤社長からのお誘い。流れるように、導かれるように、チャンスが一気にやってきました。
自分の気持ちや価値観が徐々に変化している中で、最後に背中を押された感じですね。きっかけとなった出会いに感謝しています。

目指すは日本一!オーガニックを当たり前にしたい夫婦の夢

株式会社維里

――山口移住から1年経ち…
元嘉さん:
私たちが移住したのは、山口県長門市の中でも山の方に位置する、日置畑(へきはた)という集落です。
担い手不足が加速する農業界において、世帯数18の小さな集落、畑(はた)も同じ問題を抱えていました。

1年目は「移住者」として大目に見てくれていたことも、今は厳しい目もあります。それは、私たちに対する期待と、私たちを「畑の人」として受け入れてくれているからこその叱咤激励です。
それが分かるからこそ、もっと良くしよう、来年はこうしようと、向上心が湧いてきます。

株式会社維里

私たちを受け入れてくれた畑集落。私たちは畑のみんなが大好きです。あたたかく、いつも私たちを笑顔で見守ってくれている。
自然豊かなこの場所で、時には大笑いしながら農作業をしていると、ありがたく、本当に幸せな気持ちになるんです。

 私たちはこの「畑」という集落に、導かれるべくして導かれたのだと思います。

株式会社維里

――5年後、10年後の夢を教えてください
元嘉さん:
自然栽培での耕作面積日本一になることです。
私たちは、山口県長門市日置の「畑」という集落で、夢を叶えると決めました。

愛媛県での経験から、有機農業、自然栽培はまだまだ周囲に受け入れられない農業だと感じています。
そうではなく、有機農業や自然栽培といった環境保全型農業が、ビジネスとしてもプラスになる、地域の環境にとってもプラスになる、そんな農業にしていかなければならないと思っています。そのためにまず自分が成功事例になりたい。
成功しているモデルがないと後から人が続きにくいと思います。

まだまだ日本では有機農業、自然栽培に取り組む人は少ないですが、まず自分がきちんと「できる」ようになってから、その経験から学んだ方法を他の人にシェアしたいと思っています。

山口県長門市オーガニックビレッジ

2023年3月30日には、中国地方で初めて、長門市がオーガニックビレッジを宣言しました。
オーガニックビレッジとは、有機農業の生産から消費まで一貫し、農業者のみならず事業者や地域内外の住民を巻き込んだ地域ぐるみの取組を進める市町村のことを言います(※)。
そのスタートとなる式典、「オーガニック・キックオフフォーラムinながと」では夫婦で登壇させていただきました。

※参照:農林水産省「オーガニックビレッジのページ

今後、市をあげて有機農業、「オーガニック」を推進していく長門市をけん引する企業として、「維里」も尽力していきたいです。

山口県長門市日置畑集落に移住して1年。気づけばたくさんの人に出会いました。
自然栽培が当たり前の農業の形になるように、「オーガニックが当たり前の未来」になるように。
この地で農業ができる喜び、感謝をかみしめて、これからも美味しい米作りに取り組んでいきます。

自然栽培によるお米で作られた玄米仕込みライスミールは香ばしくてほんのり甘い、毎日食べても飽きないきっと誰もが好きな味。
アレンジ無限大な玄米仕込みライスミールは、可能性無限大の首藤さんご夫妻、そして日本の農業の未来を表しているようです。日々の生活にプラス、自然環境にとってもプラス、玄米仕込みライスミールを是非一度ご賞味ください。

編集後記

自然栽培を大規模化することで当たり前の農業にしたい!そう力強く語る首藤さんのお話は、私の自然栽培や有機農業に対するイメージを覆すものでした。 人も考え方も多様化する現代において、自身の素直な気持ちとストレートに向き合い、前に前にと突き進むご夫婦の移住の決断はしびれます。 首藤さんは「導かれた」「運命だった」と仰っていましたが、自らの夢と地域の未来への熱い想い、周囲への感謝を忘れない真っすぐな気持ちが、その道を切り拓いた、そんな風に感じました。 新拠点での再スタートと玄米仕込みライスミールのリニューアル。熱い挑戦はまだまだ始まったばかりです。

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :農家さん

ライター情報

  • Noumusubi
  • 額見奈央

    楽天農業株式会社の2020年新入社員。石川県生まれ、奈良で学生時代を過ごして、愛媛にやってきました。「人にも環境にも優しく、人のつながりが生まれ続いていく」そんな地域に根差した農業を目指しています♪女子大出身・農業未経験女子だって農業ができることを発信していきます。

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